テレビディレクターにネット動画をつくらせたら、なんだかもっさりしていて、まどろっこしい感じがしました。前時代的、いうなれば、昭和っぽい。
テレビディレクターは、映像を見てもらって、情報を理解してもらわねばならない、と思っています。テロップも読めないと意味ないでしょ、と思っているフシがあります。
「わかりやすさ」「読みやすさ」が先行しているために、洗練さにかけているのですね。
かたや、ネット動画は、テロップの出し方やテンポ、リズムなど洗練されていますが、長年テレビメディアに携わっている者からすると、オシイ!と感じるところがあります。
今回は、テロップについて、とくにコメントフォローするときのテロップについて注意しておくことを5つあげてみます。
1 テロップの最適なフォント
テレビの場合、コメントフォローは角ゴシックが多いです。角ゴシックは縦と横の幅が均等なフォントです。角ゴシックには、特徴がないかわりに、テロップに書かれている情報以上の情報を与えないのです。例えば、明朝体を使うと、明朝は横の線が細い字体ですが、全体的に繊細な印象を与えます。丸ゴシックという、エッジが丸みを帯びたゴシックだと、かわいらしい印象を与えます。「印象」も視聴者に与える「情報」です。フォントによって、視聴者の印象を与えるので、コメントフォローのなかでも印象付けたいところに、それらを使います。ネット動画の場合もコメントフォローは角ゴシックにします。ただし、幅の狭い、細いゴシックを使います。
2 テロップの最適な文字数
テレビの場合、テロップフォローは下位置で2行。1行の文字数は20字程度です。テロップフォローのスペースは、画面の縦6分の1くらい。この文字数と比率をネット動画にあてはめると、画面が文字で埋まっている感じがします。テロップが占める面積が大きいのです。
動画の場合は、テレビよりも一回り小さくしてみるとスッキリします。1行の文字数は20から25字程度。テロップを入れてみて、なんとなくもっさりしてるな、と感じたら、細いフォントに替えて、サイズを一回り小さくしてみます。
3 テロップの見やすい色
映像で使われている色と反対色を使うのが最も見やすいのですが、色によっては目が疲れたり、意味を持たせたりしてしまいます。色もひとつの「情報」なのです。いちばんいいのは、白です。映像に白い部分がある場合、例えば、ホワイトボードやテーブルの白い天板、白シャツを着ているなど、白い背景に白いテロップでは見づらくなります。この場合は、エッジ(ふちどり)をつけます。エッジは黒、グレーなど。赤系のビビッドなカラーは目が疲れるかもしれません。白以外には、薄めのイエローが見やすいです。2人以上登場人物が登場する場合は、人によって色を分けます。進行役やメインの人は赤いエッジ、ゲストやサブ的な人は青エッジ。など役割によって色をかえます。ちなみに、赤は最も目がいきやすいカラーです。赤は、いちばん印象をつけたいpパワーワードに使います。
4 句読点はありか、なしか?
句読点は原則、入れません。紙媒体のテキストなら句読点を入れるのですが、映像では読みづらかったり、誤字に見えたりと、視聴者にとって違和感になります。句読点を入れたいときは、ほんの少し、スペースをあけます。スペースは半角だと空きすぎと感じます。
5 動画の信頼性をあげるひと手間・・・『推敲』する
漢字の変換が自動にされますが、誤変換されたままの動画を多く見ました。
例えば、
×児童変換 → ○自動変換
×乾燥をいう → ○感想をいう
×左党をいれる→ ○砂糖をいれる
×感覚をあけて→ ○間隔をあけて
×対策文化会 → ○対策分科会
漢字の間違いがあると、違和感を残しますし、動画の信頼性が疑われます。テロップフォローを入れる作業は目が疲れ、頭も朦朧としてしまうときがありますので、必ず、テロップ入れの作業をしたら休憩をとって見直しをします。
あるいは信頼できる人にチェックしてもらうのがベスト。誤字脱字がないか確認してもらいたい、とお願いすると、頼まれた人は真剣に見てくれます。責任感のある人にお願いしましょう。
地味なひと手間なのですが、洗練された動画なのに、誤字があるとそこで「あれ?」と一瞬立ち止まってしまい、誤字だとわかると「この動画、大丈夫かな?」といらぬ不安が芽生えます。とくに、発信者が企業や店舗の場合は要注意です。
テレビの場合は、何人もの人が誤字脱字のチェックをしています。動画の場合は、アップするまでのスピード重視ですから、徹底したチェックは難しいですが、信頼を要するような動画、例えば、資格や仕業、投資、医療、などのテーマを扱っている方は文字の推敲をされることをおすすめします。
喋りが長くて、2行に収まらない場合の処方
視聴者は、テロップを追いかけるときに、何を見ているのか、というと、「漢字」です。
日本人は漢字を追いかけるだけで、内容を把握できるのです。しかも、動画は音声が流れているので、音声そのままのコメントを入れる必要はありません。
2行に収まらない場合は、漢字はそのままで、ひらがなのいいまわしを短くアレンジするか、端折ります。話し言葉は回りくどいときがあるので、そういうところをすっぱり切り落とします。
動画を視聴すると、テレビに比べて話すスピードがはやいと感じます。これは、テレビの視聴者のほうが年齢層が高いから。30年前の番組をみると、今よりも1,5倍速くらいの早さでみんな喋っています。ナレーションも同様で、今よりも情報量が多かったのです。その当時の視聴者の平均年齢は今よりも若かったのではないかと推測。調べてみると、1992年ころは、日本人の平均年齢は38歳くらいだったのが、上がり続けて、いま45歳くらいです。
テレビ制作者が動画をつくるときは、テレビの視聴者層を動画の視聴者層に切り替える必要があります。
Σχόλια