テレビを見なくなった、そもそもテレビを持っていない一人暮らしの若者は増えています。テレビ番組の視聴率は隆盛期から確実に下がっています。こんな時代にテレビCMを出す効果はあるのでしょうか。テレビCMの効果について、考察してみます。
どんなCMが流れているのか、今、放送されているCMについて書き出してみますと・・・
①食品
菓子、インスタント麺、冷凍食品、調味料、飲料、アルコール、乳酸飲料、乳製品、
フルーツ、米
②生活用品
洗濯洗剤、食器洗い洗剤、石鹸、シャンプー、新聞、衣料
③薬
風邪薬、頭痛薬、胃腸薬、生理用品、おむつ
④飲食店
全国展開のファストフード、回転すし店、宅配ピザ、コンビニ商品
⑤エンタメ
ゲーム、スマホ、定額動画サービス、アプリ、趣味機材
⑥子ども向け
塾、教育ツール、玩具
⑦成人向け
基礎化粧品お試しセット、化粧品、男性向け基礎化粧品、ボディクリーム
⑧家電、大型家庭用品
暖房器、加湿器、白物家電、テレビ、掃除機、調理具、エアコン、インテリア
⑨ビジネスサービス
ITサービス、印刷サービス、パソコン
⑩お籠り需要
デリバリーサービス、Eコマース、買い取りサービス
⑪ショッピング
健康食品(サプリメント、飲料)、美容クリーム、育毛剤、アイデア雑貨
⑫相談
弁護士事務所、医療機関
⑬シーズン、イベント
宝飾品、結婚情報誌、就活転職サイト、クリスマスイベント、贈答品、引っ越し、
神社仏閣、餅
⑭高額商品
住宅、車、霊園
⑮企業
物流、建設、不動産
⑯金融
保険、消費者金融、クレジットカード、決済サービス、金、銀行、証券
こうして書き出してみますと、CMを出している商品やサービスはけっこうあるんだな、と感じます。CM効果は薄くなっている、と思われていますが、思いつく限りあげてみてもこれだけの分野があるので、効果は持続しているように感じます。
昨年で多かった分野で今年はない分野は「観光」です。旅行会社、宿泊施設、飛行機、鉄道、比較サイトなどです。昨年なら今の時期、多かったのに、劇的に減っているな、と感じるのは、就活サイトや転職サイト、グルメサイトのCM。こうしてみますと、勢いのある企業と、停滞している企業が歴然です。
それぞれの分野について、CMを出す効果について考えてみます。
①から③は消耗品です。ドラッグストアやスーパー、コンビニで購入できる商品群。消費するもの、購入しなくてはならないものです。ほぼ毎日、誰もが、いずれかの店に足を運んでいて、その陳列棚を通りがかると、「あ、これ、テレビでやっていたやつだ!」と手にする可能性があるもの。買う気がなくても、「そろそろなくなりそうだな」「ついでに買っておこうかな」「試してみようかな」と買い物かごに入れそうなものですね。
もしかしたら、まったく意識が働かずに、何となく手にして買っているかもしれません。
多数商品があるなかで、特定の商品に消費者の視線を向けさせるのが、CMの効果と言えます。ここには、店舗の目論見もあって、「今、CMをやっているから、目立つ場所に置いておこう」と、特設売り場や目立つポップを貼ったり、値下げやポイントサービスなど行っていることもあります。
企業のCM戦略+店舗の販売努力 が合わさって、消費者が商品に視線を向けて、手にとって、購入する、という動線がひかれるのです。
商品に特別な愛着がなく、気分や状況で購入を決める層を、浮遊層といいます。
それに対して、この商品じゃなきゃ嫌という層は不動層といいます。CMに左右されず、ずっとその商品を買い続けている人達です。いずれの分野にも浮遊層と不動層がいます。
④⑤は、すでにその商品を所有していたり、行ったことがあるという人たちに、新しい商品が出たよ、アップデートしましたよ、期間限定メニューを出しますよ、とお知らせするためにCMを出しています。すでにその商品の面白さや味を知っているので、新しい商品やメニューが出たことを知って、久しぶりに行ってみようかな、明日行ってみよう、どこが面白くなっているんだろう、などと、新しい情報へ上書き更新されていきます。しばらく、足が遠のいていた人たちを振り向かせる効果があります。
⑥⑦⑧は競合他社があり、比較検討している人にとって、最後の一押しになりそうな商品です。テレビでやっているからそれなりの効果があるだろう、とか、CMに出ているイメージキャラクターと自分を重ねて、こうなれるのかな、こうなりたいな、と思わせます。
⑨⑩は、こういうサービスがあったらいいな、と、日常のちょっと不便なことを補えるような新サービスが登場したときにCMは有効です。
⑪はテレビショッピング的なCMで、フリーダイヤルを載せているようなCMです。年配層が感じる体の不調を好転させられるような機能のある食品や美容商品は、すぐほしい!に応えてくれます。
⑫は、知人に相談しづらいことへの相談窓口としてCMを出しています。例えば借金や自己破産に関することや、薄毛に関することは家族にも相談できず、一人で悩みを抱えてしまいがちです。テレビでCMをしている会社であれば、信用できそうですし、個人情報の管理もしっかりしていそうです。
⑬はクリスマスやお歳暮シーズン、初詣、などのイベントにからめたシーズンもののCM。あ、このCMが始まったらそろそろ年末、あ、お正月がくるんだな、と感じます。CMからも季節感を感じますよね。
⑭の住宅や車もCMが多いです。どちらも頻繁に購入するものではありませんが、一度に支払う金額は大きいですし、競合も多い。こうした大きなものは、これから買おうという人たちへの広告でもありますし、既にユーザーとなっている人たちに、この会社でよかった、オーナーになってよかった、という自負心をくすぐる効果もあります。高額商品は、オーナーになって、その商品に対して深い愛情を持ってくれれば、一生のお付き合いになりますし、オーナーの周辺の人たちへ愛情は伝播していきます。買ってよかった、持ててよかった、という気持ちを持続させるためのお手伝いといったところでしょうか。
⑮は、企業イメージCMです。BtoB向け、就活する学生向けのメッセージです。
⑯は、CMを出すことで信用度をアピールできます。
テレビCMを出すことで、浮遊層を振り向かせる、不動層には愛着を持たせるという効果はいまだにあるということですね。
上記にあげた分野を見ていると、商品や企業が浮かんできます。いずれも大企業のように思えます。では、小さな企業がCMを出すことで効果があるのかどうか。こちらについては別の機会に書いてみたいと思います。
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