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テレビ番組は誰が見てもどこから見ても”わかる”もの

更新日:2023年1月25日

テレビ番組は誰が見ても、どこから見ても、これはどういう番組で、何を取り上げているのか、誰が何をしているのかがわかるメディアです。映像なんだから当たり前では?と思われるかもしれませんが、ザッピングで数秒しか目にしていなくても、”今、何を取り上げているのか”を視聴者はキャッチしているのはなぜでしょうか。


テレビ番組のわかりやすさはどう成し遂げているのか、を解説してみましょう。


人は「わからない」と感じたら、見るのをやめる


そもそも、テレビはなぜ「わかりやすさ」を重視しているのでしょうか。

それは、視聴者はテレビを見ていて、「分からないな」と感じたら、そこで見るのを辞めてしまうからです。おもしろくないから、とか、つまらない、とか、関心がない、以前に、「これ、なに?わからない」と感じられたら、その場から立ち去ってしまいます。


テレビ初登場の店が出ていようが、衝撃映像だろうが、それだけでは視聴率はとれません。突然、その映像が流れても「なに?わからない」と思われたら、素通りされてしまいます。


瞬間的に「この映像はこういうこと」と分かってもらわねば、続きを見てもらえないのです。


難しいことをどこまでわかりやすくできるか


お子さんがいると、「なんで?」「どうして?」を連発される時期がありますよね。

太陽がまぶしいのはなんで?

歯が痛いのはどうして?

なぜ、ごはんを食べなきゃいけないの?

子どもにわかるように説明するのって、難しい。


子どもが知っていることばを選んで、組み合わせて、かみ砕いて説明しなくてはなりません。子どものレベルまで自分が降りていく必要があるのです。


相手に合わせて説明すること、しかも、相手に理解させることは難しい。人が難しいと感じるところには、能力や技術が要るものです。


テレビ番組を作っている人達、ディレクターやプロデューサー、構成作家といった番組のコアな部分を担っている人たちは高学歴の人が多いです。それは、テレビで扱う知識や教養のレベルは高等学校で学ぶくらいなのですが、それをわかりやすく解説する、というのは高校までの教育ではあまり行われていません。


高校までは暗記すれば点数がとれて、卒業することができますが、大学は専門的に学び、それをレポートや論文として書いたり、人と議論したりと、自身で情報を取りに行き、考えてそれを文書としてまとめることをしていかねばなりません。またアルバイトや組織での役割を通じて、学んだことや知っていることを他者に伝えることを繰り返し繰り返しやっていくなかで、相手にわかるように伝える技術を身に着けていくのです。


テレビはおもしろいし、見ていて自分でもわかるから、きっと自分にもできることがあるだろう、テレビの仕事は面白そう、と業界に入ってくる人が多いものですが、調べものをしたり人に話を聞くなかで出てくる情報が難しいこと、そしてディレクターやプロデューサーに報告するものの、何を言っているかわからない、と言われることで1年たたずに辞めていく人が多いのです。


テレビ番組は、視聴者が見ていないところ、あまり意識していないところまで気配りされているものなのです。


視聴者の設定は中学2年生


筆者がアシスタントだったころ、当時の上司から、視聴者の教養レベルは中学2年生と教わりました。ゴールデンタイムの番組だと、田舎のおじいちゃんおばあちゃんがこたつにはいって、晩酌しながら見ていると思え、とも言われたことがあります。

それくらい、やさしく、わかりやすく伝えるという意識を持て、ということです。テレビはリアルタイム視聴が基本ですから、わからないことがあっても巻き戻して見る、なんてことはしなかった。(もちろん、録画していれば見れますが、録画するのはお気に入りの番組くらいでした・・)

見たら、理解できる、というのが同時進行していなければならない、というのが、基本なのです。


どうやってわかりやすくするのか


わかりやすくするには、余計な情報をいれないことです。そのため、撮影する前に、何を伝えたいのかを決めておきます。それを構成台本や絵コンテで書き物にします。これを作成してから、それに合う映像を撮影するのです。どういう視点で、どう撮影するか、このシーンにはどんなナレーションが入るのかを決めておくことで、撮影中のその場の雰囲気や感情の揺らぎで視点がずれたり、ブレたりがなくなります。


撮影では、想定と違うことが起こります。例えば、晴れの日を想定していても、撮影日は雨、ということがよくあります。雨、というだけで、撮りたい映像が撮れない可能性が多くなります。情景や外観は雨だし、いつもなら届くはずの食材が雨のせいで遅れるかもしれません。来るはずのお客さんも、普段より来なかったり、タレントは傘をささなきゃいけないし、傘をさすと雨音が入るし顔に影ができるし、なんとなく気分が重くなって会話が弾まない。そうすると、目先の対応に集中してしまい、本来の目的を見失ってしまうことがあります。何を撮らなければならないのか、へ意識を戻すためにも、構成台本や絵コンテが指針になります。


そうやって撮影したカットにはすべて意味があるため、音声を消して映像だけをみても、何を見せられているのか、がわかるのです。


さらに、映像を補足するための、テロップ(字幕情報)が入っています。上部には番組名や企画名、今取り上げているテーマが。そして下部には、コメントのフォローやシーンの展開を促す一言や驚かしが。サイドの縦には、コメントしている人の名前や所属している部署名が書かれています。四隅にはスタジオゲストの表情がワイプで入っています。


数秒見ただけで、映像、テロップ情報、ワイプ、全体の色調やテンポなどによって、その番組がバラエティなのか、ドキュメンタリーなのか、報道なのか、討論なのか、クイズなのか、が一瞬でわかります。そして出演者がいるのか、いれば誰なのか。何がテーマかもわかるわけです。


試しに、いま、ザッピングしてみてください。それぞれのチャンネルが何をやっているか、意外と理解していることでしょう。


2005年に出版された「人は見た目が9割」という本のなかに、「人は相手を0,5秒で判断している」とあります。


これは、人 対 人 について書かれていますが、テレビ番組も同様で、人は0,5秒でその場にとどまって見るか見ないかを決めています。人は、わずか0,5秒に入ってくる映像から多くの情報を得ているのです。


テレビ番組に、なぜ隙間なくテロップが入っているのか、なぜほとんどVTRであってもスタジオのワイプを入れるのか、はいろいろな効果があるのですが、一つは、ザッピングしている人たちに、今、このチャンネルではこういうことをやってますよ!と、引き留めるためなのです。


放送前にプレビューと修正が数回繰り返される


さらに、放送前には

プロデューサーによって、プレビューが行われます。プレビューでは、映像が構成で意図された通りに編集されているかどうかが確認されます。構成とは違っている情報になっていたら、どちらが正しいのか、視聴者に誤解を与えないか、紛らわしい表現がないか、などがチェックされます。プレビューは、映像がつながった時点、テロップが入った時点、ナレーションが入った時点、で行われます。工程ごとにチェックされて、修正しないと次工程に入れません。


動画クリエイターにテレビ番組ほどのわかりやすい映像がつくれるか?


テレビ制作者には、こうした工程のち密さと各工程のチェックに耐えるタフさがあります。自分が面白い、と思ったやり方で映像を作るクリエイターにはテレビ番組が作れないのは、ここにあります。


映像クリエイターはほとんど一人で作り上げていくものなので、自分がこれがいい、と思っているものに対して、他者からあれこれ槍を入れられるのは気持ちのいいものではありません。


テレビ制作者は、見ている人たちにとってわかりやすいのか?を追求していますが、動画クリエイターは自分が面白いのか、見ている人たちが面白いと感じるか、を追求してます。


映像制作会社は多数ありますが、そのなかで映像を外注する会社を選ぶには、伝えたいメッセージをわかりやすく伝えたいなら、テレビ番組制作の経験がある会社に、面白くセンス良く伝えたいなら、クリエイターに、と目的に合わせるといいかと思います。



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