テレビ番組の制作は、大きく分割すると、「撮影前」「撮影」「撮影後」の3段階に分けることができます。
撮影を中心に、その前後の仕事の内容が変わります。
余談ですが映画の場合、「撮影前」は、プレプロダクション。「撮影」をプロダクション。「撮影後」をポストプロダクション、といいます。撮影を中心にして、その前を表すプレ、その後を表すポストという言葉で言い表しています。
テレビ業界では、プレプロダクションという言葉は使いません。
想像しますと、プロダクションというのは制作会社を示しており、撮影前の工程も制作会社、つまりプロダクションが主導で行っているためかと思います。
そして、テレビ制作においてのポストプロダクションというのは、最後の最後、総仕上げの作業をする場所や工程を指しています。総仕上げをするのは、専用のスタジオで専門のスタッフたちが行うのですが、スタジオのこともポストプロダクションと称していて、略してポスプロ、と言っています。
テレビ業界では、プロダクションとポストプロダクションは作業する場所や主導している人が所属している会社を示しているのだと思います。
3段階、それぞれの仕事とは
さて、寄り道してしまいましたが、3つの段階はそれぞれどんな作業を指しているのかといいますと・・
①撮影前ープレプロダクション
撮影するための準備をします。番組の設計図を作るようなもので、映像の設計図は 「構成」とといいます。作業は構成台本をつくったり、出演者や撮影場所を決めていきま す。
②撮影
構成をもとにして、撮影をしていきます。
③撮影後ーポストプロダクション
撮影してきた映像をもとにして、見やすく、面白く見れるように整えていきます。
図にしてみると、こんな感じの流れになります。
矢印の長さは、かけている時間の長さを表しています。撮影してからが長いんですよね・・
編集は好きだけど・・・
ディレクターのいちばん好きな作業は③編集を上げる人が多いものです。しかし・・・
編集でやっている工程を細かく書き出してみると思いのほか多く、映像をつなぐのは好きだけど、それ以外は面倒くさい。やりたくない。となかなか着手したがらない人も少なからず、います。
今回は、編集のどんなところが面倒くさいのか、を探ってみます。クライアントさんの中にも映像を継続的にアップしたいのだけど、編集が進まなくて・・・と悩んでいる方が多いものですが、編集できない理由がその面倒くささ、にあると思います。
編集の最初の作業が面倒くさい
テレビ番組の編集は、パズルのピースを組み合わせていくようなものです。
撮影した映像はそのピースの多くを賄うものですが、それだけでは足りません。
例えば、新聞や雑誌、ネットなどのメディアに公開されている記事、取材先から預かった過去の映像や写真、グラフなどのデータ、イメージ映像やイラスト、CGなどがあります。そのピースを揃えなくてはなりません。その映像制作に必要なビジュアルのピースすべてを「素材」といいます。
これが揃ってから編集をする場合もありますし、編集しながら必要な素材を探すこともありますが、まず、これが面倒くさい。
編集の工程は細かいのがたくさんある
さて、それ以後の工程も順番に書き出してみましょう。
①素材をそろえる
②素材を整理する
③構成に沿って、OKカットをつないでいく
④つなぎに違和感のあるところを入れ替えたり、カットを足したり、カットをはずしたりしてスムースに見れるようにする
⑤尺になるように、さらに余計なところを削る
⑥プレビュー
⑦指摘された箇所を修正する
⑧テロップ原稿を書く
⑨ナレーションを書く
⑩映像に合わせてナレーションをあててみて、修正していく
⑪映像を整える
⑫テロップを入れる
⑬音楽や効果音を探す
⑭音楽や効果音を入れる
⑮ナレーションを入れる
⑯テロップを修正する
実に16もの工程があります。テレビ番組の場合、⑥プレビューと⑦修正は最低2回、多いときは5回以上に及ぶこともありますから、だいたい20工程、といったところでしょうか。
ディレクターのイメージ
「ディレクター」と聞いて思い浮かべる姿は、パソコンで編集作業をする様子だったりしますが、その作業は①から⑩の工程です。⑪からの工程は、ポストプロダクションと称される総仕上げをするための編集スタジオで行われ、ディレクターの指示で専門スタッフが作業します。
このなかで、とりわけ面倒くさいのが、①②③の作業。面倒な作業が最初にあるので、腰が重くなっちゃうわけです。
テレビの素材量
テレビの場合、放送時間は1分でも、素材は1時間以上になることもあります。だいたい、素材の量は完成品の10倍以上。インタビューを撮影するときは、ほしいコメントが出るまで、いろいろな角度から質問しますから、放送は10秒程度でも、素材は1時間くらいあることも。
ドキュメンタリーのときは、コメントが多いですから、どこでどんなことをしゃべっているか、書き起こしをすることもあります。1日でできるのは、1時間程度です。ドキュメンタリーで密着していると、実際に編集作業に入れるまでに1週間程度かかることもあります。
編集はなかなか終わらない
編集は見直すほど、何かアラが露見してきます。コメントがまどろっこしかったり、重複していたり、シーンとシーンのつなぎ目が違和感あったり。
アラを感じたら、修正して、を繰り返すため、際限がないので、目標の尺になったらプロデューサーに見てもらうプレビューをします。プロデューサーはその映像を見るのは初めてですから、一般視聴者に一番近い感性で見てくれます。
編集期間が長いワケ
それを繰り返して、完成品に近づけていく、という気が遠くなりそうな作業をしているわけです。テレビ番組の制作がどうしてそんなに時間がかかるのか、というと、こういう面倒臭い工程が多いから。
自動編集ソフトもあるけど
自動編集ソフトが登場して、AIで編集することができるようになりました。映像制作会社では、「ついに映像制作は自動化できるようになったのか」とため息が漏れ聞こえたものです。
クリエイティブな仕事がAIにとって代わられることはないだろう、と思われていたのが、できるようになってしまった。しかし、それで満足できる映像が内製できるのか?担当者の負担は減るのか?というと、そうでもなさそうです。
AIに任せられないのは
結局、どの映像を使うのか、のOKカットを選ぶのは人ですし、素材から使いたいOKカットを選ぶのも人ですから。AIがしてくれるのは、人にとっては作業として楽しい部分だったりします。結局、面倒くさいところを人がやらなくてはならないのは、なんだか機械に使われているような感じですね。
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